1.問題の所在
韓国人には日本に殖民地支配された事を恨む人が多いですが、台湾も韓国と同じように日本に殖民地支配されたのに台湾人は日本を恨む人が少ないらしいです。この事をもって、韓国人を批判する日本人がいます。(注1) しかし、それは、韓国人と台湾人の状況の差というのを無視しています。
2.台湾人が恨まない理由
まず、注意すべきなのは「台湾人」が漢民族移民の子孫(注2)だという事です。実は通常「台湾人」と自称している台湾住民(注3)は台湾が清朝中国の植民地だった時に中国本土から台湾に移住して来た漢人の子孫なのです。そして、「台湾人」の祖先である漢民族移民は台湾西部や北部の先住民族を駆逐・迫害・同化していったのです。しかも、彼らの一部は清朝中国中央政府の先住民保護策を破って先住民の土地に侵入したり、先住民の土地を奪ったりしたのです。そういう意味で台湾人の祖先も昔は植民地支配する側にいた侵略者(注4)なのです。つまり、日本は台湾先住民に対しては植民地支配・侵略責任がありますが「台湾人」と称する漢民族に対しては植民地支配・侵略責任はないのです。だから、台湾人は日本に侵略されたと言える立場でもないし、そういう事を言えば「やぶ蛇」なので言わないのです。
また、「台湾人」は個人の自由意思で日本国民(日本臣民)になったのです。日本政府は、日清戦争に勝って台湾の割譲を受けた時に、それまで植民地支配していた側の台湾に住む漢人すなわち台湾人個人個人に、不動産売却して中国本土に戻るか、日本国民となって引き続き台湾に住み続けるかの選択をさせました。そして、台湾人の祖先は個人の自由意思で日本国民となる事を選択したのです。本来ならば台湾が中国の植民地から日本の植民地になった時点で台湾から追出されても仕方のないものだったので文句の言える筋合いではないのです。
それだけでなく、台湾人にとっては特殊事情があります。台湾人(第二次世界大戦終結前から台湾に住んでいた漢民族系移民)は1947年に起きた228事件という事件で第二次世界大戦終了後に台湾の統治をした中国国民党政権によって虐殺・弾圧されたという悲惨な実体験があるので、それと比べれば異民族である日本の植民地統治の方がずっと良かったからです。(蒋介石の国民党の恐怖政治で統治されるよりは日本の植民地統治の方がずっとマシだったと痛感したからです。)
さらに、台湾人が親日的な理由として考えられるのは、台北政府は中国から独立したいので、日本を非難するより親日的態度を採るようにそれとなく台湾住民を誘導している面もあるでしょう。
3.韓国人が日本を恨む理由
韓国の場合には有史以来、先祖代々住んでいた本国が日本に併合され消滅させられたのです。その精神的屈辱感は大きなものがあったと思います。たとえ、当時の韓国の政治家の一部が日本に併合される事を同意したからといっても(注5)、韓国の一般大衆個人個人は併合に同意したのではないのです。
以上のように、韓国人が日本を恨み、台湾人が日本に感謝するのはそれなりに理由があってのことなのです(注6)。
浅見真規 asami@mbox2.inet-osaka.or.jp
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(注1)たとえば、(新しい歴史教科書をつくる会・会長の)西尾幹二氏は、その著書「国民の歴史」(初版・第2刷)p.706-709
で、「韓国人にいくら言っても伝わらないもどかしさ」と題して、台湾では最近、教科書で日本の統治を肯定的にとらえ日本に感謝しているのに対し、韓国人は逆恨みばかりして困るとの論調で「暗黙のうちに朝鮮人が台湾人を侮辱しているという結果になりはしないであろうか。」
p.707とまで言って韓国批判をしています。これは(言い方がひどいだけでなく)、韓国と台湾の歴史の差を無視した大暴言でしょう。
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(注2)「広辞苑」(第二版・1969年)または小学館「日本国語大辞典」参照。ただし、差別的用語なので最近の広辞苑(1998年11月11日)第5版第1刷には載っていません。
(注3)一部例外として、日本の領有時に中国本土から移民した漢人の子孫と漢民族に同化した台湾先住民である平埔族も通常は「台湾人」に分類されているようです。
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(注4)台湾人を台湾の侵略者という時、日本の多数派民族の和人も北海道の侵略者だという事を忘れてはなりません。
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(注5)日本や英国の学者の中には日本の韓国併合が当時の国際法では不法ではなかったとする者もいる(産経新聞ニュースHP・
2001年11月27日記事参照)ようですが、仮に併合が不法でなかったとしても、韓国の場合には一般民間人が精神的屈辱感を感じるのは自然な事でしょう。
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(注6)もちろん、韓国人が必要以上に日本を恨んでいる部分もあるでしょう。日本軍が韓国人女性を従軍慰安婦として拉致・強制連行したというのは疑問だと私は思ってます。
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